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日本通訳学会コミュニティー通訳分科会・通訳教育分科会合同例会報告 [コミュニティ通訳分科会]

日本通訳学会コミュニティー通訳分科会・通訳教育分科会合同例会報告

2007年3月31日 日本通訳学会コミュニティー通訳分科会・教育分科会合同例会が名古屋の中京大学において開催されました。当日は、手話も含めた多言語の通訳者や弁護士、法廷書記官などの司法関係者も多く参加してくださいました。参加者数は46名で、盛会のうちに無事終了しました。

第1部:コミュニティー通訳分科会

[講演] 藤井成俊氏(愛知県弁護士会所属の弁護士)
藤井先生には、「裁判員制度導入に伴う法廷通訳人の役割の変化について」と題して、基調講演をしていただきました。その中で、2009年から施行される裁判員制度の下では、公判は集中審理となり、通訳人の負担も増え、更には、「評議での決め手は、証人等の法廷供述となり、即ち、通訳人の通訳次第で、有罪無罪が決まる。」として、より通訳人の正確な通訳が重要になると、述べられました。

[パネル・ディスカッション]

水野真木子(千里金蘭大学)
「等価性」をめぐる議論のこれまでの経緯を説明し、司法の現場で頻出する特殊表現や定型文を通訳・翻訳するに際しての「意味」「法的意図」「法的効果」の等価性について述べました。さらに証人質問などの一般的な発話での一貫性のなさや文化に規定される表現の通訳の問題についての問題提起も行いました。

吉田理加氏(立教大学大学院生)
スペイン語通訳者としての実務経験と法廷傍聴などを通して行った研究に基づき、実際の例を挙げながら、特にレジスター、および異文化コミュニケーションの観点から、法廷通訳の等価性の限界などについて具体的に述べました。通訳者の役割を定義するとともに、能力を測るための認定制度の導入の必要性についても触れました。

毛利雅子氏(南山短期大学)
英語通訳者としての実務経験に基づき、主に語彙レベルでの正確性の問題と、意味およびレジスターの等価性について、具体例を挙げながら述べました。コミュニケーターとしての通訳者という観点から、中立性と文化間の差の問題について意見を述べました。

津田守氏(大阪外国語大学)
ユーザーが求める司法通訳の正確性について触れ、それについて学べる文献などの紹介をしました。
 このように、年次大会に引き続き、司法通訳の正確性、等価性について、パネリストがそれぞれの立場で発表し、会場からもさまざまな立場やさまざまな言語の方たちからのご意見をいただきました。

第2部:通訳教育分科会

[発表 1] 溝口良子氏(フリーランス通訳者、南山大学大学院人間文化研究科教育ファシリテーション専攻)
通訳者ができる限りの努力をし、能力を発揮して訳出行為をしても顧客満足につながらない場合があるのは、通訳業務関係者間(クライアント、エージェント、話者、通訳者)の通訳観のずれと、関係者間でのコミュニケーション不足が関わっているのではないかという仮説を提示。顧客満足につながる通訳スキルの養成と現場での人間関係構築のためのコミュニケーションスキルの養成が必要であると述べられました。

[ 発表 2] 服部しのぶ(藤田保健衛生大学短期大学専任講師)
 藤田保健衛生大学短期大学での「医学英語」の実践報告と「外国人医療受診サポートボランティア研修会」での学びについて発表されました。医学英語での授業では、リスニング教材としてCNN, BBCなどのやさしいサイエンスニュースやERの中のわかりやすい医療行為のやり取りを利用して学生の関心を喚起しているとのこと。また名古屋では外国人が医療機関を受診する際のサポートボランティアに対して、通訳トレーニングも含めた研修プログラムをNGO団体が提供しており、そこでの学びについてもご紹介くださいました。海外の医療通訳トレーニングプログラムも参考にし、最後に、大学での医学英語教育実践についての考察を加えられました。


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