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第6回翻訳研究分科会のお知らせ [翻訳研究分科会]

第6回翻訳研究分科会を以下の要領で開催します。今回は昨年St. Jerome PublishingからStyle and Narrative in Translations: The Contribution of Futabatei Shimeiを出版されたHiroko Cockerillさんをお迎えし「二葉亭四迷のロシア語翻訳」と題したお話を伺います。参加される方は当日直接来て頂いても結構ですが、一応水野(a-mizuno@fa2.so-net.ne.jp)までご一報下さると助かります。

日時:7月8日(日)午後1時半~
場所:立教大学(池袋キャンパス)太刀川記念館1階第1第2会議室
ゲスト:Hiroko Cockerill PhD, Visiting Scholar, Asian Languages and Studies, University of Tasmania

<要旨>
「二葉亭四迷のロシア語翻訳 」

本日は、昨年セント・ジェローム社から出版されました『翻訳における語りと文体:二葉亭四迷の貢献』と題する私の本についてお話したいと思います。

近代文学の創始者としての二葉亭四迷、その創作作品『浮雲』については既に語りつくされてきた観があります。が、翻訳者としての四迷、及び、その翻訳作品については不当に看過されてきたように思われます。本書では、先ず、二葉亭の処女翻訳作品『あひびき』と『めぐりあい』、八年の間隔をおいて発表されたその初稿と改稿とを、主に文末表現に着目して比較しました。その結果、従来、中村光夫などの文学史家によって「文体的後退」と否定的に評価されてきた改稿が、初稿と同様、「原文のニュアンスを忠実に再現しようとする」二葉亭の周到緻密な翻訳態度でなされてきたものであることが、明らかになりました。即ち、初稿では、二葉亭はロシア語動詞の過去形を忠実に再現するために、助動詞の「た」を過去の意味で、連続、多用しました。文体史上、この「た」形の連続使用は、画期的なものであったといえます。一方、改稿では、画期的であったが故に批判も多かった「た」形の多用を、二葉亭は改めたのです。二葉亭が改稿に於いて「た」形を切り捨てて行く際に用いられた方法は、ロシア語動詞の完了体、不完了体によって「た」形と「る」形とを使い分けていくというものでした。その結果、改稿の中の「た」形は、過去ではなく、完了の意味で使われることになったのです。原文の動詞の意味を忠実に再現するという意味では、初稿、そして、改稿ともに、翻訳理論上、foreignizing translation (異文化受容的翻訳)をしたといえましょう。

改稿での翻訳方法、ロシア語のアスペクトに基づく動詞の訳し分けが、原作の語りと文体とを最も有効に再現している例として、ゴーゴリ原作『肖像画』についても言及する予定です。


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